「糸に撚り(より)をかける」と書いて”撚糸”と言い、撚りの強度を高めた素材が”強撚”です。そもそも、撚りをかけるとは糸をねじり合わせることを意味し、普段着用している繊維製品の糸はねじりあって強度を保っているんですね。
繊維製品の素材が強撚かどうかは、撚り数の単位(T/m)で決まります。具体的には、糸1mあたり何回転したかどうか、という数字です。
<撚り数の単位と分類>
甘撚 | 500T/m以下 |
中撚 | 500~1000T/m |
強撚 | 1000~2500T/m |
極強撚 | 2500T/m以上 |
撚りが強ければ強いほど繊維は強度を増し、撚りの強い糸で作った衣類は汗などの水分を吸収・乾燥させやすいです。
吸湿性と速乾性に優れているため、夏用の服に多いシャリ感(麻や綿素材に多い肌触り)を出せます。それだけでなく、強撚糸の繊維は丈夫なので毛羽立ちが少なくなり、肌との接触が減るので肌ざわりがサラサラになります。
一方で、甘撚〜中撚といった撚りの弱い糸は強度が弱くなりやすいです。ソフトで柔らかい肌触りになるので、起毛素材やニット製品によく使われます。生地はゴワゴワせずにクタッとなるのが特徴的です。
普段私たちが使っているタオルやシーツ、カーテンなどの繊維製品には撚糸が使われています。そもそもなぜ撚糸を使う必要があるのか、という根本的な部分を解説します。
繊維製品を作る場合、糸を輸入して仕入れるか、原糸工場で製造を行います。この段階は繊維製品を作る第一工程に該当しており、次の工程である糸の加工(撚糸業)にて撚りをかけます。
第一工程で仕入れた糸は、蚕から入手できる生糸の状態であり、繭から出した糸は細くてバラバラなので、束にしなければ繊維製品に使うことはできません。
つまり、1本だけでは不足している強度を複数本で撚りをかけて束にするというのが本来の目的です。その過程で、色々な撚り方で強度や肌触りが異なることがわかり、加工技術の進歩とともに新たな撚糸方法が生まれています。撚糸は撚りの方向によって分類されることもあります。この場合は右撚(S撚)と左撚(Z撚)の2つに分けられ、織物表面の光沢や摩擦係数に影響します。
また、撚り(回転)数の多い強撚糸は『クレープ織り』と呼ばれ、美しく体のラインが出るようなドレープ性や落ち感を出す際によく使われます。”しぼ”と呼ばれる糸の細かい屈曲も出やすくなります。手触りもかなりドライで、布自体にコシが出るのも特徴的。
撚糸全てに共通して言えるのは、糸が太ければ太いほど効果が大きくなるという点です。同じ撚り数でも、細い糸と太い糸では効果が違ってくるんですね。
強撚糸を使った織物の代表的な例として、「ちりめん」が挙げられます。
ちりめんは絹を平織りにして、縦に撚りの少ない糸、横は撚りの強い糸(右撚りと左撚り)を使って交互に織ったものです。1mあたり2000〜4000回転という強い撚りをかけているため、表面に凹凸(しぼ)ができるのが特徴的です。
さらに精錬といって、絹織物の表面にあるセリシン(蚕が生成するたんぱく質)を溶かすことで、光沢が増すように仕上げをします。このような加工を経て、ちりめんは高級な呉服や風呂敷として作られています。
ウールの強撚糸は吸湿性と放湿性に優れているため、夏用スーツの素材によく使われます。さらに強撚糸であれば細い糸を使えるため、薄手の生地を織るのに向いています。
ウールの強撚糸は高い通気性を確保できる点と、ドレープ性が出ることで体のラインにフィットして見栄えがいいという点でもメリットが生まれます。
注意点として、強撚糸で作られた生地は撚り縮みが起きているため、水洗いやスチームアイロンを行うと収縮してしまいます。夏用衣類でも水洗いができないのがデメリットであり、ドライクリーニングのみとなっています。
こちらの女性用コックシャツは、強撚糸による生地なので吸水・速乾に優れています。たくさん汗をかく厨房や動き回るホールスタッフにとって欠かせない機能ですよね。
素材もポリエステル90%なので、丈夫で長持ちです。ポケットもしっかり付いてて機能的。